横浜市立盲特別支援学校

My Own

人間には、それぞれの「ものの見方」がある

Mission

学校の思想と実践をコミュニケーションすること

「多様性」や「包摂」という言葉は、時間の経過と共に日本でも市民権を得てきました。言葉として多くの人に認知されたことはポジティブなことです。しかしながら、言葉が社会に広く流通することで、その言葉の意味をじっくりと考え、対話する機会が減ってしまうことも少なくありません。人はカテゴリーではなく、一人の人間として尊重されるべきです。教育においても本来、一人一人に合ったプロセスが必要です。

横浜市立盲特別支援学校は、幼稚部から高等部まで、視覚障害の細かな度合いや、人間一人一人の個性に合わせたニーズに向き合うことを大切にし、教材、授業、個別指導に至るまで、細やかな工夫を凝らしている学校です。同校から、入学を検討するために学校を訪れる子どもや親御さん、そして研究会等で訪れる教育関係者の方々向けに、同校の思想と実践をコミュニケーションする依頼をいただきました。

Idea

対話が生まれるポスターシリーズ

私たちが学校を訪れて何より驚いたのは、先生方が、生徒の障害や個性の細かなグラデーションに本気で応えられていたことでした。例えば障害の度合いや実情に合わせて教材を手作りしたり、教室のレイアウトや授業内容を調整したり、それぞれの性格を把握したうえで声かけを行なっていたり。学びやすい環境をつくるだけではなく、生徒が一人の人間として将来しっかりと自立できるように、それぞれの考え方や世界との関わり方を確立できるようにするために本当に細かな創意工夫されていることが分かりました。それは言葉だけではなく、実践としての多様性教育でした。私たちは、視覚障害のある生徒への教育という視点で言い換えれば、横浜市立盲特別支援学校では「見える」ことではなく、一人一人の生徒の「ものの見方」を尊重していると言えるのではないかと考えました。

コミュニケーションを検討する中で、単に学校の実践を説明するのではなく、対話が生まれるようなコミュニケーションができないかと考えました。障害があるないに関わらず、人間には違いがあり、それぞれの世界の捉え方、「ものの見方」があることを表現することを通して、「多様性」や「包摂」について考えたり、対話したりするきっかけをつくれないか。そして、一人一人違うことを「面白い」と言い合えるような社会、という理想を考えるきっかけをつくれないかと考え、ポスターを制作することになりました。

具体的には、「目が見えない」「見えにくい」生徒さんの「ものの見方」を表現するために、富士山、自由の女神、ピラミッド、地球、宇宙という5つのユニバーサルなモチーフを設定。生徒さんたちの中にあるイメージを言葉で表現してもらい、言葉を元に、実験的な創作活動をされているイラストレーター・四宮愛さんに、生徒さんたちの触覚的な感覚を表現できるマスキングテープやトレーシングペーパー、食品用ラップなどの素材を使って仕上げていただきました。

それぞれのモチーフに「私だけの、富士山。」「My Own Statue of Liberty.」などのコピーを配置。言葉のレイアウトにも多様性があってもいいのではないかという考え方から、6つの点で構成される点字のスタイルでレイアウトしました。

Result

「違い」を「面白い」と言い合える社会へ

ポスターシリーズはエントランスをはじめとする校内に掲出。入学を検討される生徒さんや親御さんに加え、同校で開催された「第66回弱視教育研究全国大会」では全国から集まった教育関係者にも見ていただきました。このプロジェクトの制作プロセスとアウトプットで私たちがチャレンジしたのは、人間には一人一人違いがあり、世界の捉え方や「ものの見方」に唯一の「正解」はないということを表現することでした。これらのポスターを通じて、違いを単に受け入れるのではなく、それを心から「面白い」と言い合える社会についての対話が始まること、そして同校が実践している教育について理解が深まることを願っています。

Client

横浜市立盲特別支援学校

Year2025
Credits

Creative Director : 淺井勇樹
Art Director : 神津舞
Copy Writer : 佐藤数馬/松田紘樹
Producer : 渡邉寛文

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