MOTIVATION NOTE
プロデューサー

「ラジオが心地いいんです。」〜セレンディピティはアルゴリズムの外からやってくる〜

アルゴリズムは効率第一

先日、とあるオンラインセミナーで「雑談が大事」という話を聞きました。特に昨今は会議や打ち合わせの多くがオンライン化された中で、他者への共感のきっかけとしてのちょっとした雑談の有効性を話されていました。

それに関連して思い出した話で、かつてスティーブ・ジョブズが新社屋を設計する際、研究者同士の偶然の出会いの重要性を認識し、イノベーションが生まれやすいように新社屋の設計をオープンな構造にしていたそうです。

どちらも、効率化から漏れてしまっている無駄と思われているもの に対するフォローとも取れます。

アルゴリズムという言葉をよく聞きます。まずは、検索、レコメンド等の結果を導き出す元となるルールとなっていることはよく知られているかと思います。facebookの「知り合いかも?」のレコメンドの根拠が数式で表されるのを見たことがありますが、自分なりのアルゴリズムの理解としては、「1本の人参から星形の輪切り人参を効率よく切る方法」あるいは「テーブルやソファのあるリビングを掃除する掃除ロボットの一番効率的なルート」みたいなものだと理解しています。今や個人へのレコメンドから高層ビルのエレベーターの自動運転、あるいは株式市場の自動取引まで至るところで使われているのは言うまでもありません。

一方このアルゴリズム、効率を求めるあまり失ってしまっているものもあるようで、それがよく聞くフィルターバブルとセレンディピティ(消費)の問題につながっているとも思います。セレンディピティは一般的には「偶然の幸福な出会い」といった意味で使われることが多く、マーケティング的には、セレンディピティ消費という言葉もあり、いわゆる「ハマる」という感覚でしょうか。定番の安心感もいいけれども、たまには新しい刺激との出会いも欲しいといった感覚でしょうか。

広告で考えると、デジタルマーケティングの発達によって、逆に失われつつあるものの一つとしてよく聞きます。つまり、デジタルマーケティングによって、行動履歴情報が取得され、個人の嗜好の詳細は把握されやすくなっている一方で、取得した情報に関連のある情報ばかりが提供されてしまう効率化に資するので、全く予期していなかった偶然の出会いがなくなってしまう、といういわゆる「フィルターバブル」問題との関連でよく聞きます。また、フィルターバブルは裏返すとどんどん自分の好みに閉じこもってしまうので、飽きやすい、あるいは世界が狭くなるので、他者への誹謗中傷に繋がってしまう危険性も秘めているとも言われています。

一方、ラジオのまったりさと言ったら(笑

一方、動画配信サービスのコンテンツにもそろそろ飽きてきた頃、「何か面白いものはないかな〜」と探していた時にすっかりどハマりしたものについて考えてみると、そのきっかけはいずれも「ラジオ」でした。

「なんでだろう??」と考えてみると、いくつか理由があるような気がします。まずはじめに、 いわゆる購入履歴からのレコメンド情報は「ウザい」イメージになりがちです。なぜなら前段でも触れたように、レコメンド情報は過去の自分の好みに関連しているので「大体知っているし。。」や「今はそんなに興味がない。。」と言った気持ちになりがちです。できれば今までの自分が思いも寄らなかった新しいものにハマりたいし、その方がインパクトが強いはずです。

次に、ラジオは「ながら」聞きで充分!「情報を取得するぞ!」と力まなくても、受け身で委ねられる感覚が楽です。「選択をしなくて良い」状態が心地よいのだと思います。人は選択肢が多すぎると、物事を決められないそうです。何しろ、ラジオは聞いている時のハードルが低い。「次何か面白いものの情報を得よう!」と力んで聞いているのではなく、人の話をそばで聞いている感覚、まさに雑談くらいの気軽さです。

極端に言うと、聞いていなくてもいい。ラジオだと聞きながら本も読めるし、休日の午後などは、気持ちよく寝落ちもできます(笑。 一方アルゴリズムは効率を最大限重視するので、なんだか必死です。一番可能性の高いものを提示してきます。逆に、購入の可能性の低いものを提示してくるアルゴリズムは矛盾しています。(あったら、とても楽しい?或いはうっとおしい?)

効率第一で勧めてくるアルゴリズムと、あわよくば何か自分にとって新しい情報が得られればいいや、くらいのラジオ、この距離感の違いが心地いいのかもしれません。そんな音声コンテンツの価値の見直しが、「radiko」の民放全局カバーや、Podcastコンテンツの拡充につながっているのかも知れませんね。

PROFILE

広報/ナレッジシェア

グラフィクデザイナーを皮切りに、セールスプロモーション、クリエイティブプロデューサー、クリエイティブマネジメントなどを経験後、永いキャリアと幅広い職歴?を元に現職。趣味/英検、TOEIC受験