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【官製アクティベーション】生活者の潜在的欲求が爆発した瞬間3選

2020年、新しい日常で暮らすなか、コロナ禍以前より、政府の対応や施策に敏感になった人は多いのではないでしょうか。きっと自分自身の日常生活や行動に直結しているからですよね。例えば、GoToトラベルキャンペーン。これって、いわば官製アクティベーション。ちょっと気になったので、過去や現在のそれを振り返ってみました。

違和感が快適を加速させた

クールビズが新語・流行語に選ばれたのは、2005年(15年前!)。懐かしいです。今やビジネスシーンでの夏の軽装は常識となり、クールビズという言葉すら使わなくなりました。企業などの受付で「当社はクールビズを推進しています。従業員は軽装で接客しています。」といった張り紙に出会わなくなって久しいですよね。

思い起こせば、クールビズが始まる直前、私の仕事は広告営業。真夏に長袖シャツとネクタイ、そしてジャケットを羽織って、「インターネット広告市場はますます拡大しますよ!」と前のめりに営業活動していました。15年前はハンディ扇風機など存在せず、その顔面は、まるでサウナ室で6分間ほど我慢したような滝汗です。Z世代のみなさんは想像がつかない現象ですよね。

私は、「なぜスーツを着なきゃダメなんだ?」「ジャケットを脱いだら売上が落ちるのか?」「普通に体調が悪くなるんですけど!」と、このビジネス習慣に強い疑問を抱いておりました(実際、ネクタイやジャケット着用をサボり気味)。当時の上司は炎天下でもネクタイを締める派だったので、同行した商談時、灼熱の帰路でリアルに小競り合いしていました(さらに暑くなる…)。

そんなとき、環境省がクールビズを提唱したわけです。私は、「脱いでいいんだ!」「着なくていいんだ!」と小池大臣に激しく感謝した記憶が思い出されます。そして、クールビズは日本全国へ一気に標準装備。まさに官製アクティベーション。謎の違和感を解放する運動が、生活者の“潜在的欲求”を肯定してくれました。

私の上司はというと、ショートソックスに革靴という、当時は斬新すぎる攻めたクールビズを開発し(今ならオシャレさんですが)、「足元まで涼しい格好したかったんじゃん!」と脳内で強めに突っ込んだことは言うまでもありません。

その後、スーパークールビズなども発表され、今に至ります。今夏は、在宅勤務の普及によって、クールビズのありがたさを体感しづらい状況でしたが、酷暑のなか自宅は涼しくて快適です。すると、リモート会議での上座はどこかなど、嘘のような在宅ワークならではの新たな問題が発生。ビジネスパーソンの悩みは尽きません。

不安が電源のスイッチになる

健康で文化的な標準限度の生活を送るには、それなりのお金が必要です。政府が用意してくれているお金の仕組みを確認すると、ふむふむ・・・、エコカー減税、住宅ローン減税、ふるさと納税、NISA、iDeCoなどなど。ここで注目は、2018年に始まった少額投資非課税制度「つみたてNISA」です。

老後2,000万円問題や新型コロナウィルスによる雇用不安から、つみたてNISAが2020年3月末時点で、前年比7割増の約220万口座に急拡大しているというニュースが流れました。その後も開設数は増えていると予想されます。

つまり、生活者の資産形成や積立投資の“潜在的欲求”が行動に移されたわけです。貯蓄から投資への流れが、まさかこんな形で追い風になるとは。制度設計した人さえ想定外な官製アクティベーション。

ちなみに、「つみたてNISA」をGoogle検索すると、SEOやリスティング広告が、WEBの土俵上でがっぷり四つしています。基本的にコンバージョン(=口座開設)は1人につき1回ですので、ランディングページのUI/UXは銀行・証券各社がしのぎを削っています。ダイレクト型デジタルマーケティングに身を置いている方にとっては、示唆を得られるのではないでしょうか。

オーナーのこだわりを応援する

ドライバーのみなさん、最近、白いナンバープレートの軽自動車が激増していることにお気付きでしょうか。ナンバープレートが白いだけなのに、一瞬、欧州のコンパクトカーと見間違えるほど。はっきり申し上げて、黄色のそれより断然カッコよいです。

彼らは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会特別仕様ナンバープレート(または、ラグビーワールドカップ特別仕様ナンバープレート)を装着しているのです。軽自動車オーナーの“潜在的欲求”だった、ボディカラーと合わない黄色いナンバープレート問題を見事に解決。実際、申込総数のうち、9割は軽自動車が占めているそうです。立派な官製アクティベーション。

ちなみに、私見ですが、軽自動車のなかでも、カスタムグレードや2トーンカラー、オープン2シーターは、特に白ナンバー率が高いです。こだわりを持って軽自動車のハンドルを握っていたオーナーさんたちはきっと、白いナンバープレートの装着を待ち望んでいたんだなーと、こちらも嬉しい気持ちになります。

燃費や維持費が経済的で、走りも進化している軽自動車。永続的な白いナンバープレートの制度を望んでいる人も多いのではないでしょうか(現制度は2021年9月末まで申込期限が延長されました)。

決壊した共感の波及にスピード違反はない

このように過去と現在の官製アクティベーションを振り返ってみると、、、広告と似ていることに驚かされます。まだ誰も大声で宣言していないけど、生活者が無意識に合意形成されつつある感情を、お初で言語化/映像化/活動化すると加速度的に共感の輪が拡がる。生活者の爆発寸前の“潜在的欲求”を可視化する作業です。

コンテンツもそう。「お笑い第7世代」は、まさに言語化ですよね。テレビ番組やイベントへの集客エンジンの機能を実装し、事件化まで格上げされているきらいがあります。まるでダウンタウンさんなどのお笑い第3世代が登場したときのような高揚感。お笑いの歴史の1ページを塗り替えるプロジェクトに参加している錯覚すら覚えます。

SNSによる共感波及のスピード違反は誰も取り締まりできません。その瞬間を捉え、適切なタイミングと表現で実態化すれば、マーケティングコミュニケーションを超えた、新しい価値を創造できるはず。私たち広告会社が●●化を駆使し、官製ではなく、“民間”アクティベーションを開発したいと企んでいる今日このごろです。

PROFILE

統合コミュニケーションディレクター

1976年生まれ。ポータルサイトや出版社の広告部を経て、デジタルエージェンシーを経験した後、フロンテッジに参画。近年は、“ソーシャルドリブンな統合コミュニケーション” “あらゆる価値のデジタライゼーション” のデザイン&エグゼキューションを主要テーマに据えつつ、SNSを活用したブランデッドコンテンツの企画制作・流通拡散に強みを持つ。趣味は、ゴルフ、筋トレ、ドライサウナ、非ネット接続の据置型TVゲーム。娘2人のパパ。