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プロデューサー

【OOH×5G】コミュニケーション指標の変化を見据えた、新たなプラットフォームへの挑戦

ポストコロナ環境下、メディアを取り巻く状況にも変化がみられます。テクノロジーの進化、今後のメディアの評価指標の動向も読みつつ、OOHの進むべき方向性を考えてみます。

ポストコロナ環境でのOOH

OOH(アウトオブホームメディア)は移動時に接触する生活密着媒体であり、強制視認媒体だから、メディアのトレンドには左右されないというのが定説でした。
実際ここ10年程度の日本の広告費統計(電通発)をみても、交通&屋外広告で計5,000億円前後の市場規模で推移しており、他のマスメディアが年々減少傾向にも関わらず、大きな変化はありません。

しかし、ここにきて大きく風向きが変わってきています。コロナによる外出自粛、そして制限解除後も、都心に今までのような人出は戻っていない現状をみると、ポストコロナ環境において、OOHが残念ながら逆風なのは間違いないでしょう。コロナ禍におけるニューノーマルが今後どのように影響するかはまだわかりませんが、クライアントの評価を取り戻すには、まだしばしの時間がかかると思われます。

5Gスタート元年

そんな中、こちらもひっそりと各社とも5Gサービスがスタートしました。ご存じのとおり、5Gは、「高速・大容量」「低遅延」「多数端末との接続」が主な特徴と言われる第5世代移動通信システムです。特に、「高速・大容量」の特徴を生かした4K/8K高精細映像やAR/VRを活用した高臨場感のある映像が今まで以上に、安価かつ容易に実現可能になる事は、コミュニケーション領域においても大きな変化が訪れ、新たなビジネスチャンスの創出機会となると思われます。

では具体的にこの5GによってOOHの分野では、近い将来どのような事がおこり、どのような手法が有効かというと、大きくは以下のような事だと考えます。

・「高速・大容量性能」を生かして、デジタルサイネージや屋外広告に配信するコンテンツが、よりリッチになり、今まで配信できなかったクリエイティブ表現が可能になる。
・「多数端末との接続可」や「低遅延」を生かして、当該媒体のターゲットを感知、パーソナライズされたリアルタイムの広告メッセージ配信が可能になる。

いろいろなところで、今後20年のメディア動向として、従来のサーキュレーションやインプレッションといった数値指標への追及が、限界値になっていくとの予測から、コミュニケーションの深度が重要になってくるのではないか、という話を耳にします。日常の生活シーンにおいて、個別ユーザーの興味関心ある分野や商材を、リッチなコンテンツでタイムリーに体験できるようになっていく、設備投資の問題は勿論ありますが、OOHにとって5Gは、「時代にマッチしたメディアへのアップデート」へのフックになるのは間違いないでしょう。

5G時代を見据えたプラットフォーム

そしてすでに5G時代に向け、この分野で新たなプラットフォーム構築を進めている媒体社も複数あります。代表的なのが、NTTドコモと電通の共同出資により創設されたLIVE BOARD(ライブボード)で、2019年2月「プランニング、広告枠の取引、配信の自動化が可能な次世代型OOH」のプログラマティックOOHをローンチしました。携帯電話ネットワークの運用データを活用し、SSPのプラットフォームを利用した配信コントロールからインプレッションに基づくデジタルOOH広告販売をすでに展開しており、現状ではデジタルアドのRTBまでには至っていませんが、5年後には、リアルタイムのオーディエンスデータに基づく広告配信を目指すとのことです。

東急電鉄は2019年の渋谷再開発のタイミングで、田園都市線渋谷駅構内に通行者目線では世界最大となる25m幅の大型サイネージ媒体、東急プレミアムビジョンをリリースしました。ビジョン上部にはスマホ連動、双方向配信可能なモジュールも設置し、4K配信を見据えた超大型ビジョンとともに拡張性を持たせたものとなっています。1週間1社買い切りで360万円から520万円(グロス料金)と決して安価ではないですが、コロナ前の販売は非常に好調でした。

ちなみにOOHが盛んな欧米では、個別に管理されていた各媒体がネットワーク化され、デジタルアドと同様の概念でプランニングとメディアバイイングを一気通貫できるように、システムが整備されつつあります。トレーディング担当、DSP、SSP、その他測定ツールなどのプレイヤーが介在しつつ、売買が行われており、LIVE BOARDが目指している未来がすでに稼働しています。

逆境だから生まれる次の一手

リーマンショックでレイオフされてしまった金融関係の人々が、デジタルコミュニケーションの世界に流入したのを契機に、現在のアドテクの芽生えになっているのは有名な話ですし、音楽、アート&カルチャーの分野でも、苦境の時代にこそ、斬新かつ新しい価値を持ったものが生まれる事が多いのは周知の事実です。平和な時期は変わりたくないDNAが強く作動して動きにくい、逆風だと動かざるをえないという事なのでしょう。

OOHの分野においても、ニューノーマルな生活環境、そして5Gサービスが稼働し始めた中、サーキュレーションのみ重視された従来の枠売りビジネスはひとまず横に置き、ブランド価値を高め、人々の印象や記憶にいつまでも残る映像体験が出来るような、「コミュニケーションの深度」に重きを置く新たなプラットフォーム構築へのスタートの年とすべきではないでしょうか。

PROFILE

メディアプロデュースグループ マネージャー

入社以来、営業局に長く在籍した後、ソフトバンクとソニーのOOH新会社、ソニーのフェリカベースのMK新会社の立ち上げ等に参加した後、現在に至る。主にオフラインメディアの分野を中心に、デジタル視点とメディア全体を俯瞰した立ち位置で、様々なクライアントのメディア立案から実施まで行う。