MOTIVATION NOTE
プロデューサー

「現代美術、いつまで現代美術と呼ぶのか」問題

「現代美術」と消費社会

美術が好きです。中でも現代美術と言われるカテゴリーが大好きです。最近ではバンクシーがすっかり有名ですね。大学卒業後の最初の仕事がギャラリースタッフだったこともあり、今でも気にはなっていて、休みの日に東京都現代美術館とかに行ってます。なかなか作品を購入するまでにはいかないですが。

何で好きかと言うと、「何でもあり」のアバンギャルドな感じが自分は好きなんだと思っています。「こういうのもアリなんだ!」と驚かせてくれる、許容範囲の広さというか。逆にモチーフと技法が議論のメインになる古典的な絵画にはあまり興味はないです。

最近では、STEAM(Science、 Technology、 Engineering、Art、Mathematics)教育という言葉もよく聞かれ、また、経営(者)にもアートの素養が必要、ということで、MBA(経営学修士)に対してMFA(美術学修士)が重要、との話もあります。これまでの「論理的・分析的」な判断以外に「真・善・美」「倫理」といった感性や創造性も重要視されてきていることはよく聞く話だと思います。

マーケティング的?に考えると、作品の価格と価値の根拠や、ある作家の作品が急騰する理由などは消費社会における情報のあり方と資本主義の関係から読み解けそうです。ただし、私は作品を値段では見ないようにしています(できるだけ)。価格はアートワールドとオークションの賜物なんだろう、くらいに思っています。100億円を出せる人より、さらに120億円を支払っても所有したいと思った人が世の中にいたにすぎない、くらいに思っています。もちろん、人類の遺産としての価値とは別の話です。

また、美術展をコンテンツと考えれば、人気の企画展から何となく今の気分みたいなものが推し測れるのかもしれません。2019年で言うと、バスキア展が人気だったのはよくわかるのですが、一方、これは私の無知によるものだと思いますが、森美術館での「塩田千春展」が計67万人弱、と同館歴代2位の総入場者数を記録したのは意外(関係者のみなさま、大変申し訳ありません!!)でした。もちろん作品のインパクトはハンパないですが、ここまでの入場者数となった原因から何かしら見出せそうです。

「現代美術」の次に来るカテゴリーはない?

さて、話を元に戻すと、特に若い頃 (1980〜90年代頃)は、ナム・ジュン・パイクやヨーゼフ・ボイス、ローリー・アンダーソンなどなど、まさにオールスターのように現代美術の作家を知り、「現代美術かっこいい!」とミーハー的に喜んでいました。はてさて、最近はどうなのか、と現状を調べるのに読み始めたのがこちら↓。

『これからの美術がわかるキーワード100』(美術出版社)

おかげさまで最近の潮流がとてもよく分かりました。中でも分かりやすく面白かったのが大森俊克氏 x 沢山遼氏 x 新藤淳氏 x 星野太氏による「コンテンポラリー・アートとは何か」についての対談。

なぜなら、デュシャンの「泉」から「現代美術」が始まったとして、現在のキュレーション、アーカイビングまでをも芸術のカテゴリーに含む「現代美術」という呼び方(カテゴリー?)は一体いつまで続くのか?また、「現代美術は終わった」という声もちらほら聞こえてきているので何かそろそろ次の呼び方、カテゴライズがあるのではないか?確かに「現代美術」は「何でもあり」だが、この先、美術、芸術に大きな変化が訪れたとしても未来永劫「現代美術」に含まれてしまうのだろうか?(=次の新しいカテゴリーはもうない??)という疑問を持っていたところだったので、非常に面白かったです。

本書によれば、その答えとしては、「現代美術」は古典絵画→近代絵画(=Modern Art)の次に来ている歴史概念としての「現代美術」ではなくなってきていて、「ひとつのジャンルないし制度の呼び名だったということに、意識的にならざるをえない変化があった」(本文より引用)、とあります。確かに中でも述べられているとおり、歴史概念と考えると約100年前の作品をもはや現在の作品と同様に「現代美術」と呼ぶのは矛盾があるし、また一方、ひとつのジャンルと考えるにしても昨今ではキュレーションも一つの芸術であるとの見方もあるので、100年前の作品(カテゴリー)とキュレーション(作品?)とでは明らかにジャンルとしても異なる、ということはわかる気がします。

ただし、「現代美術とはひとつの制度である」と考えるならば、この制度はそもそも現代美術を規定している制度(「現代の(=Contemporary)」美術だから、現代美術(=Contemporary Art)、ということ?)なので、これからの変化をも含み得るとても広義な制度だとすると、今後もずーっと「現代美術」というカテゴリー(名)のままなのでしょうか。

なんだか、新たな時代が来た感がなく、ちょっとつまらないような。22世紀になっても、ウォーホルの作品を「現代美術」と呼ぶのかな??

参考図書
『これからの美術がわかるキーワード100』BT BOOKS
『芸術の陰謀』ジャン ボードリヤール著、NTT出版

PROFILE

広報/ナレッジシェア

グラフィクデザイナーを皮切りに、セールスプロモーション、クリエイティブプロデューサー、クリエイティブマネジメントなどを経験後、永いキャリアと幅広い職歴?を元に現職。趣味/英検、TOEIC受験