MOTIVATION NOTE
プロデューサー

【新聞メディアの未来地図】今だから「本気」と「本音」で話したい

発行部数、2010年から約26%減、購読者平均年齢は56.8歳(注1)この数字をむしろ変化のチャンスと捉える、若く意欲的な人材が新聞社にはまだまだたくさんいます。日頃彼らと接する中で、私なりに新聞メディアのあるべき方向性を考えてみたいと思います。

若年層と新聞の微妙な関係

若年層と新聞メディアの関係に関して、2015年全国メディア接触・評価調査の結果が少し興味深いのでご紹介します。自ら新聞を購読している、新聞へのロイヤルティーが極めて高い「自主購読若年層」と、新聞に全く接触することのない「非閲読若年層」を抽出し、それぞれの情報、消費などに関する意識を比べたものです。

情報軸で切ると、「色々な知人、友人と情報交換をする」「情報を整理して保存するのが得意だ」「ソーシャルメディアを使うのが得意だ」といった項目、生活軸で切ると「サークルやコミュニティ等への参加度」「スポーツ観戦やイベントへの参加度」「美容、ファッションへの支出」といった項目、これらを比較すると、いわゆる世間一般で言うところのアクティブで情報に敏感、それを拡散、共有を楽しみ、消費に積極的な若年層は、むしろ常日頃新聞を読んでいない人達の方が多いという事になってしまいます。もちろんそれ以外の多くの項目で自主購読若年層が優れている部分もたくさんありますが、おおかた自主購読若年層は、学ぶ事は好きで、優等生的、おそらくはやや内向きで、生真面目タイプといった事になるのかもしれません。

※日本新聞協会広告委員会「2015年全国メディア接触・評価調査」より引用
※日本新聞協会広告委員会「2015年全国メディア接触・評価調査」より引用
※自主購読若年層:同居の親ではなく、自ら新聞購読している15~39歳の男女(単身世帯含む)
※非閲読若年層:新聞を読んでいない15〜39歳の男女

新聞購読という行為自体は、本人にとっては必要不可欠な習慣だったり、自分を高める事ではあるが、個人的な事でもあるし、他者や友人に対してはその事をアピールはしないでしょう。もし彼らが、もう少し新聞購読の必要性や面白さみたいなものを外へ発信してくれると、若年層の新規読者の開拓に寄与したり、新聞に対する印象も変わるのかもしれません。

新聞メディアの優位性を今一度考えてみる

広告視点でいうと、モバイルサイズに慣れた若年層にとって、大きくインパクトあるクリエイティブを手元で視認できるのは新鮮だとか、クリエイターや広告主にとっては、1dayの賞味期限ゆえ、むしろ思い切ったチャレンジができる、というような話は最近よく耳にしますが、メディア本来の優位性を集約すると、最終的には以下の2つになると考えます。

十分な取材に基づき、信頼できる情報が掲載されている事

何といっても記事と内容の信頼性はこのメディアの生命線となります。ブランドセーフティの担保ができない、さらに玉石混交の情報が多いといわれるデジタルとは、全く対比と言っていいでしょう。2014年朝日新聞に従軍慰安婦の誤報記事が掲載されてしまったのですが、本社前では抗議の市民がたまに見受けられるなど、今でも尾を引いているのは、まさにその裏返しという事かもしれません。

したがって、掲載される広告コンテンツが、新聞の持つ公共性、信頼性とメッセージ、これらにマッチするとより効果的となります。最近では企業のESGやSDGsに対する取り組みとか、日経に掲載された、香港学生のデモ、クラウドファンディングで集められ、世界各紙(国内では日経のみ)に掲載されたDemosisto(デモシスト)(=香港の学生らでつくる民主派団体)等はいい例かもしれません。

世の中の出来事や動向がとりまとめてつかめる事

ざっと目を通せば、国内外の全体像を大まかに把握できる利便性がまずあります。もう少し読み込んでいくと、物事を関連づける、想像する、つまり自分の頭で考えるという事、そして毎日読むことにより、これらの事が自然に習慣になっていきます。わかりやすいところでは、世の中の動きと株価との関連性、「サスティナビリティ」「働き方改革」「スマートシティ」のような紙面を賑わす現代のキーワードが、互いに関連性の中でつながっていること等、テキストタイトルで一瞥し、興味ある内容のみ読み込んでいくオンラインのスタイルでは見えてこない世界が新聞にはあるように感じます。

活性化のためのアイデアとして

メディアとしての今後の活性化や再生に関しては、当然各社とも打てる手は打ってきており、見識者も至る所で様々な議論をしています。今では有料会員69万人になった日経電子版でさえ、確立するまでにほぼ10年かかったように、特効薬はないでしょうし、新聞はメディアとしての歴史があるだけに、方向転換も容易ではない事は承知の上で、私が日頃感じているのは以下の2点です。

新たな人材の育成や発掘

前段で「情報の信頼性が生命線」と記しましたが、報道がメインなだけに基本的には編集部の力が強く、ブランド力はある半面、どうしても保守的になる部分があります。
例えば、後発のNEWSPICKSにおける落合陽一、前田裕二のような、若手で発言力、牽引力のあるタレントを今から独自に育成していく、或いは発掘、誘引して、編集の一部を任せるという事は、購読者の若返りや新規クライアント開拓の視点からも有効だと思うのですが、いかがでしょうか。

非デジタルのソリューション開発

メディアのデフォルトがデジタルの運用型にシフトしている今、予約型メディアのROASの視点からみた場合の曖昧さは、新聞に限らずどのメディアも同じです。それに加えて読者層がシニア層中心という事はもちろんありますが、残念ながら新聞とデジタルとの相性は必ずしも良くないのでは?というのが私の正直な印象です(経済紙としての位置付けの日経電子版は別)。むしろデジタルに寄っていくのではなく、別の手法で、本紙以外のコンタクトポイントやソリューションを開拓していく方が近道なのではないでしょうか。

例えばおよそ1年前に立ち上げた読売新聞のYBS(YOMIURI BRAND STUDIO)は、積み重ねてきた信頼性、社内スタッフの取材力・構成力で総合的にコンテンツを制作、運営ができるという事を武器に、既に100案件以上の実績を残しています。広告収益のデジタルメディアに向かうのではなく、ここは一番の強みである「社会的に信頼性あるコンテンツを一気通貫で制作できる」という、新聞の一番の強みをかした、コンテンツ制作に伴う新たなソリューション開拓を考えてみる、という方が近道ではないでしょうか。

マネタイズしていくという気概

新聞社の主なる収益は販売と広告で、おおよそ6対4といわれています。販売部数に関しては、現役購読者の高年齢化に伴い、若年層の開拓が進まないと先細りのリスクが高いのは言うまでもありません。また販売部が活動している新規購読者の獲得には思ったよりも経費がかかるのです。そうなるといかに広告収益を上げていくか、という事は今後ますます重要になってきます。

全国紙でも各紙の戦略は大きく異なっています。デジタルシフトを強化し、そのための人員を獲り、紙からの大きな転換をはかっているところ、知見とネットワークを生かして様々なバーティカルサイトを立ち上げ、どこに伸びしろがあるか方向を模索している紙、発行部数世界NO.1をアピールし、ブランド維持と広告価値をキープしていこうとしている紙、その方向性は様々です。

いずれにしても新聞社は、編集者や制作部、展覧会やスポーツイベントなどの事業部門はもちろんの事、グループ全体では出版、レジャー、旅行等のサービス、不動産、商業施設、教育、福祉等々、様々なソリューションと、報道機関ならではの豊富なネットワークを有しています。使えるものは総動員して、マネタイズしていくという姿勢、そのためのアイデアや工夫こそが一番求められる事になるのではないでしょうか。

注1:出展:日本新聞広告協会。発行部数 2010年53,708,831部から、2018年39,901,576部で、約26%減。

PROFILE

メディアプロデュースグループ マネージャー

入社以来、営業局に長く在籍した後、ソフトバンクとソニーのOOH新会社、ソニーのフェリカベースのMK新会社の立ち上げ等に参加した後、現在に至る。主にオフラインメディアの分野を中心に、デジタル視点とメディア全体を俯瞰した立ち位置で、様々なクライアントのメディア立案から実施まで行う。