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クリエイター

【今年も猫年!】世界のニャンフルエンサー最前線

日本全国が祝賀ムードに沸いた令和元年も終わりを迎え、五輪イヤーの幕が開けた。国内のお祭り気分には別次元の拍車がかかり、スペシャルな年に干支が回ってきたネズミたちは、ここぞとばかりに宿敵である猫たちへの反逆を企んでいるに違いない。

「猫ブームの次はオレたちの時代!」と、ネズミたちが鼻息を荒くするのも無理はない。昨年はSNSやメディアで活躍したスター猫たちが、次々と虹の橋を渡ってしまった猫ロス続きの年だったのだ。

フロンテッジ社内の取り組みがきっかけで8年前に猫ブログを立ち上げて以来、個人の活動として国内外の猫情報と愛猫の日常を紹介し続けている私は、これまでにも何匹もの有名猫たちの追悼記事を書いているのだが、これほどまでビッグネームが次々と逝ってしまった年はなかったように思う。

不機嫌な顔の巨星、タードちゃん墜つ

萌えかわいい猫のイメージとは真逆の「への字口」のしかめ面が海外の投稿サイトRedditに掲載され、タルダルソース(愛称:タード)が世界の注目を浴びたのは、2012年のことだ。

グランピー・キャット(Grumpy Cat:不機嫌な猫)などというネガティブこの上ないあだ名をつけられながらも、彼女はその猫らしからぬ人間味あふれる表情で人々を熱狂させ、英語で言うところの「インターネット・センセーション」となった。テレビ番組はもちろん、意識の高い人たちが集う最先端テクノロジーの祭典、SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)にも登場し、2015年にはスーパー有名人しかお声がかからないマダム・タッソーの蝋人形モデルにまでなった。

いつも不機嫌な「おこキャラ」は、インターネット・ミームのネタとしてもうってつけだった。ステージママ的な役割の飼い主タバサ・バンデセンさんとともにCM出演やグッズ展開と活動の場を広げ、「猫ビジネス」の先陣を切っていったグランピー・キャット。その英語名称は登録商標に申請され、多額の資産価値が見積もられたほどだ。

そんな歴史に刻まれるべきスター猫であった彼女が、昨年5月、尿路感染症の合併症でこの世を去った。享年7歳。人間界の「人生100年時代」と同様に「猫生20年時代」が到来しているペット業界において、その死は早すぎた。日本では大きな話題にはならなかったが、個人的には間違いなく2019年の重大ニュースのひとつと言える。



たま駅長の穴を埋めた後輩たち

グランピー・キャットのお悔やみモードに陥った私は、4年前のたま駅長の旅立ちを思い出した。

たま駅長は、偉人ならぬ偉猫とでも言うべき国民的猫であり、その存在は海外にも知れ渡っている。和歌山電鐵貴志川線の初代猫駅長として貴志駅の財政危機を救い、日本に「ネコノミクス」を巻き起こした張本猫であり、2015年に虹の橋を渡ってからもなお、貴志駅の守り神として崇められている稀有な存在だ。

参列者3,000人にのぼった彼女の社葬はニコニコ生放送で中継され、自宅でバーチャル参列することにした私も、ライブ映像を観ながら涙し、1匹の猫の葬儀とは思えない本格的な式典に遠隔から参加できたことに感謝さえした。

たま駅長の場合、他界後にご本猫が神様として復活しただけでなく、現在も公式ツイッターを「中の人」ならぬ「神の声」で更新し続けるという大人の事情を押し通している点も、他のニャンフルエンサーとひと味違う。

さらに彼女の意志を受け継いだニタマ、よんたまをはじめとする後輩猫たちが次々と駅長猫に昇進し、和歌山電鐵のPR活動を継続させながら「たま駅長ロス」のファンたちの心を癒すというストーリーづくりにも、たま駅長ビジネスに対する経営者の愛と手腕を感じる。



「永遠の子猫」リル・バブ、天使になる

世界が陥った「グランピー・キャット・ロス」からの回復を早めてくれたのも、和歌山電鐵の後輩猫駅員たちのようにSNSで活躍していた同業の人気猫たちだ。猫イベントやCMなどでグランピー・キャットと共演したこともある彼らは、自分たちのInstagramやFacebookにいつもどおりの愛くるしい姿を投稿し、ファンの心を和ませた。

なかでもユニークな見た目が印象的なセレブ猫、リル・バブの存在は際立っていた。グランピー・キャットがそうであったようにリル・バブも猫バージョンの小人症であり、不機嫌な「への字口」とは真逆の、ゆる可愛いチャームポイントが人気の秘密だった。彼女は常に舌が出っ放しになっている「てへぺろ顔」をしていたのだ。

大理石骨病も患っていたリル・バブの見た目の不思議さは、科学者の関心の的にもなった。今年の6月には、クラウドファンディングで資金調達をして実現したリル・バブのゲノム解析の結果が発表された。グランピー・キャットとほぼ同時期に注目を浴び始め、慈善活動などを通して「猫活」を続けてきた彼女は、人間からも猫仲間からも一目置かれる存在になっていた。この先はゲノム解析をきっかけに、医療分野への貢献も期待できる。メディアは、そう報じていたのだが…。

今後の活躍が注目されたこれからという時に、飼い主であるマイク・ブリダフスキーさんがInstagramに2枚の写真と思いがけないメッセージを投稿した。「バブといっしょに撮った最初のツーショットと最後のツーショット」と書き始められている投稿文は、12月1日にリル・バブが天国へ旅立ったことを告げていた。

約8年半の猫生だった。普通の猫とは明らかに違うハンディキャップのある体で生まれた彼女は、獣医から余命半年、長くて1年と宣言されていたという。その8倍もの長さをセレブ猫として活躍しながら過ごせたことは、奇跡と言ってもいいのかもしれない。しかし、世界の人々に愛され、尊敬される、ニャンフルエンサーだった彼女が、突如この世から姿を消してしまった衝撃は計り知れない。しかも、よりによって、グランピー・キャットが虹の橋を渡った同じ年に。



『猫侍』で活躍したベテラン名女優、あなごちゃん大往生

世界のニャンフルエンサーの二大巨頭といっても過言でない小さなモフ毛の塊が相次いで虹の橋を渡ってしまった2019年は、令和元年の日本の猫界も、スター喪失の痛手を受けた。

2013年にテレビで放送され、映画化もされたドラマ『猫侍』で、主演の北村一輝さん演じる斑目久太郎を翻弄する絶世の美猫、玉之丞役を演じたあなごちゃんも、昨年度の鬼籍入りスター猫名簿に名を連ねることになってしまった。8月13日の未明に息を引き取った彼女は、その前月に21歳の誕生日を迎えたスーパーご長寿猫だった。人間の年齢に換算すると100歳に相当する、文字通りの大往生だ。

猫界の美魔女として有名だったあなごちゃんは、『猫侍』の撮影時はすでにかなりのベテランで、年齢を感じさせないミステリアスな美しさでファンを魅了した。動物プロダクションに所属するタレント猫が、何年にもわたって注目を浴び続けるケースは、おそらくそれほど多くない。人間よりはるかに寿命が短い猫たちの引き際をマネージメント側が心得ているからだろう。そんな中、プロフィールに「ずっと現役女優でいたい」との夢を載せていたあなごちゃんは、異例だった。

晩年も特に大病を患うこともなく、所属プロダクションのお気に入りのベッドの中で女優猫としての生涯を閉じたあなごちゃん。彼女は、日本の猫タレントの年齢に対する考え方を変えた存在だと言えるのかもしれない。熱烈なファンのためのお別れの場も設けられ、10月に開催された吉祥寺ねこ祭りでは追悼企画の写真展も開催された。



インスタのフォロワー数世界一!ギネス記録保持猫、ナラ・キャット

ともすれば、広告の仕事よりブログで猫ニュースを紹介することのほうに情熱を傾けがちになる私は、次々と猫界の重鎮たちがこの世を去ってしまう現象に一抹の不安を感じ始めた。もしかすると、永遠不滅と思えた猫ブームの終焉が訪れるのかもしれない。令和時代の始まりは、猫時代の終わりなのか?しかし、あることを知ってから、猫人気に不安を感じた自分を恥じた。それが、SNS界の正統派萌え猫、ナラ・キャットのギネス記録認定だ。

ナラ・キャットは、グランピー・キャットやリル・バブのような個性的で奇抜なルックスの猫ではない。猫のアイドルグループがあったらセンターポジションをキープできるようなビジュアル系の保護猫だ。少々メタボなところも、ご愛嬌。グランピー・キャットなどといっしょに米フリスキー社と契約を交わすなど巧みなビジネス展開を続けながら、着実にファンを増やし、晴れて昨年の9月に「世界一Instagramのフォロワー数が多い猫」としてギネス世界記録に認定された。

その時の記録は、421万5,466人。もちろん、現在もさらに記録を更新中で、すでに430万人を突破している。人間界の海外セレブの天文学的なフォロワー数にはさすがにおよばないが、日本国内の芸能人・著名人ランキングと比較すると、5位に食い込むほどの数である。

グランピー・キャットの英語名の右肩に®️がついていたように、ナラ・キャットの名前の右肩にもさりげなく「TM」の二文字が乗っている。彼女がカメラ目線で萌えかわいいポーズを取りまくっている間は、おそらく猫ブームは衰退することはないだろう。



2020年は、世界も日本も「猫年」に!

今回取り上げた海外スター猫は、いずれも米国出身だが、ブレグジット騒動で揺れる英国でも、外務省勤務のネズミ捕獲長パーマストンが職場復帰を果たして猫の働き方改革に一石を投じているし、国営放送のBBCもクリスマス企画としてお掃除ロボットに乗った猫を9時間9分9秒映し続ける耐久動画をリリースしている。BBCに美味しいネタを持って行かれた家電メーカーは、この動画を見て悔しがったに違いない。

というわけで、ネズミたちよ。今年が子年だと思って浮かれていると、痛い目に遭うぞ。2020年は、「20(ニャオ)20(ニャオ)」の猫年であることを忘れてはいけない。

PROFILE

コピーライター

日・英それぞれの大学の写真学科を卒業するも、結局、コピーライターに。家猫4匹+庭猫1匹、オウム5羽、ミミズク1羽、インコ1羽、金魚+熱帯魚のお世話係。2011年からFC2ブログ「ねこねこNEWS」運営。愛玩動物飼養管理士1級、ねこ検定上級。