MOTIVATION NOTE
プランナー

【本屋インサイト】「最高」を再考する

あくまで個人的な感想として聞いていただきたいのですが、本屋に並ぶ書籍の「タイトル」。この書籍名の付け方が、最近じわじわと変わり始めていると思うところがありまして。僕の心に留めておくのもどうかと思い、ここに記させていただきます。

本屋を歩き回るのが「最高」に好き。

本屋を歩き回るのが好きです。ほぼ毎日本屋で、なんとなく歩いています。好きな本屋は、池袋ジュンク堂書店、もう20年近く通っています。本屋で本を買うことは決して多くないけれど(最近はKindleで買います)店内を歩き回りながら、新刊コーナーを眺めたり、広告関連コーナーをチェックしたり、はたまた宇宙や物理学など、ふだん自分に接点の薄い分野のコーナーをあえて立ち寄ってみたり、単純に考え事をしながら歩いたり…、わりと子供の頃から“本屋散歩”をよくしていました。

私のキャリアは、コピーライターとしてスタートしたのですが、そもそもコピーライターになろうと思ったきっかけも、本屋で偶然見つけた「広告クリエイターの素」(宣伝会議)という本に刺激を受けたからです。そう、意外に人生をちょっと変えます、本屋散歩。

‥‥ということで、このモチベーションノートでは、私なりに長い間、書店を歩き回ってきた中で最近感じている、書店や書籍の“変化”をお伝えしようと思います。正直、何に役立つか分かりません。ただ、「本屋は、人間の欲望の見本市」であると、私は勝手に思っているので、このモチベーションノートのタイトルも「本屋インサイト」という、それっぽい感じにしています。

出版不況が続くなか、出版数が伸びる「最高」の本

そんな感じで、いつものように何気なく本屋を見渡すと、書籍タイトルで最近よく目に付く、ある言葉があります。それが「最高」。

出典:PUB DB 出版書誌データベース 検索結果より

出版不況が続き、新刊の出版数も減り続けているなかで、過去5年を遡っても「最高」という名がつく書籍が、むしろ増え続けています。たとえば、どんな本があるのか、早速見てみましょう。

最高の体調(鈴木 祐)
最高の人生の作り方(高橋 佳子)
自分史上最高の柔軟性が手に入るストレッチ(村山 巧)
小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て(高橋 孝雄)
酒好き医師が教える 最高の飲み方 太らない、翌日に残らない、病気にならない(葉石 かおり 、浅部 伸一)
最高のコーチは、教えない(吉井 理人)
スタンフォード式 最高のリーダーシップ(ステイーブ・マーフィ重松)
人生も仕事も変わる!最高の遊び方(成毛 眞)
‥‥etc

もう、最高ですよね!この一冊さえ、読んでおけばオッケイ。ほかは、読むだけ時間の無駄であると言わんばかりの「最高」の本の数々。ちなみに今年は7月時点で、すでに80冊以上の「最高」の本が出版されているそうです。情報化社会、情報過多の現代において、「最高」は正解の情報をいち早く摂取するための道標のような言葉ですね(読んでないので詳しく分かりませんが)。

「最高」の本は、いかにして最高になるのか。

では、最高の本はいかにして生まれるのか?「雑談」の本を例に取り上げます。雑談系の本が、書店で多く見かけるようになりましたが、発端は明治大学教授の斎藤 孝さんの「雑談力が上がる話し方」が出版され、雑談力ブームが起こりました。ざっくりですが、時系列で、雑談がテーマの本を出版されてきた流れを追ってみます。

2010年:
雑談力が上がる話し方――30秒でうちとける会話のルール(斎藤 孝)
雑談力(笑福亭 笑瓶)

2011年:
チャンスをつかむ雑談力(三枝 理枝子)

2012年:
誰とでも気軽に雑談ができる本(永崎 一則)

2013年:
何を話せばいいのかわからない人のための雑談のルール(松橋 良紀)

2014年:
面白いほど雑談が弾む101の会話テクニック(神岡 真司)

2015年:
超一流の雑談力(安田 正)

2016年:
負けない雑談力(渡瀬 謙)
マンガで分かる!超一流の雑談力(安田 正)

2017年:
その雑談 カチンときます(吉田 照幸)

というように、雑談力の育む方をはじめ、テクニック集やマンガで分かりやすくしたり、すこし恐怖を煽ったり、様々なアプローチで雑談を切り取った関連本が多数出版されました。しかし、これほど多くの雑談系の本が書店に並ぶと、読者としては何を読んでいいのか分からなくなるもの。そこで、満を持して出版されたのが、こちらの本です。

2018年:
最高の雑談力(茂木 健一郎)

著書、脳科学者の茂木 健一郎さん。人間の脳の視点から雑談を語っている。これは否定しようがない、「最高」と呼ぶのにふさわしい本ですよね。雑談系のように、関連本が乱立し、カテゴリーとして飽和状態に陥ったときに「最高」の本が登場する傾向があるように思います。最高の本の著者に医者や科学者が多いのも、その分野の権威として信頼できるからでしょう。何はともあれ「最高」の本はこれさえ読んでおけば安心で、わざわざ本を比較して選ばずに済む、最高にラクでありがたい本だということです。

小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て(高橋 孝雄)
いまの科学で「絶対にいい! 」と断言できる 最高の子育てベスト55(トレーシー・カチロー)

…。あれ?
それでは、また本屋で会いましょう。

PROFILE

プランナー/コピーライター

カレーが好き。本屋が好き。バスケが好き。子供が生まれてから、子供も好き。人は、どのようにして「好き」という感情が芽生えるのだろうか。そんな研究を悶々と続けている「フロンテッジ偏愛実験室」やら、スタートアップのコーポレートステートメントを共創する「フロンテッジベンチャーパートナーズ」やら、好きなように活動しております。