MOTIVATION NOTE
プロデューサー

雑誌メディアの現在地。シームレス&カスタマイズなソリューション利用法と今後進むべき方向性を探る

雑誌不況といわれ続けて、はや10年以上になります。
各社とも、ようやく過去の成功体験から脱却して、雑誌ブランド力を生かした様々なソリューションを生かす方向に大きく舵をとりはじめています。

雑誌メディアの現在地

「2018年 日本の広告費(電通)」では、雑誌広告費1,841億円/6兆5300億円(総広告費)でシェア2.8%、1日のメディア総接触時間でも12.3分/396分(全メディア)でシェア3.1%(博報堂DYMPメディア環境研究所「メディア定点調査」2018年)という数字になっています。
3.1%という数字に愕然としますが、これが本当に雑誌メディアの現在地なのか?という事になると、日々現場でやり取りしている感覚からすると、少々違和感を感じます。

例えば、昨年新設された「マスコミ4媒体由来のデジタル広告費」(2018年 日本の広告費)によると、552億のうち337億が雑誌デジタルという事で、この項目では最大値になっています。早い段階からデジタルシフトをしてきた事、雑誌とデジタルの相性の良さが、ひとつの結果に表れており、紙での接触だけでなく、同メディアのコンタクトポイントが増えてきている事を実感する数字です。

日本ABC協会の雑誌ブランドをはかる指標数値としても、数年前の発行部数のみの指標から、雑誌本体部数、電子版読み放題サービス、SNS、オンライン、アプリ、メルマガ、読者組織、イベント等々、欧米では当たり前だったトータルユニバースを測る指標に変更され、今や完全に定着した感があります。

そして数字では表れない、雑誌媒体の一番の強みである、ペイドメディアとしての消費者と媒体の密接な関係値は、そのまま精読率の高さにも結び付きます。タイアップ広告はもちろんのこと純広も、編集頁同様、ひとつのコンテンツとして、重要な位置づけとなってきます。
実際、広告接触率は72.4%、その中で広告注目率(読者のうち、広告を「確かに見た」人の割合)は47.9%と他メディアに比較しても高い数値になってきています。

雑誌メディアの最大の課題

デジタル化、コンタクトポイントの拡大がすすむ中で、解決しなくてはならない課題は勿論いろいろとあります。その中でも筆者が個人的に感じる一番のウィークポイントは、「検索性の低さ」にあるように思います。
メディアとしての豊富な情報量、情報の深度に比較して、短時間で必要な情報だけをすぐに収集する事に慣れている現代人のライフスタイルにはまだまだマッチできていません。
今や検索できない=存在しないと同義語という状況の中、この使い勝手の低さは、早急に解決すべき課題だと感じます。
その雑誌の特集が、どんな内容なのか?どんな著名人がページを持っているのか?
最低でも目次ページ程度の内容まではスマホで検索でき、その続きは、電子マガジンや本誌購入で、というところまでは持っていければ、利用者や購読者は相当増えるのではないでしょうか。

シームレス&カスタマイズなソリューション活用法

一方クライアントサイドから考えると、情報過多の時代、そして情報収集が無料なのは当然というこの時代に、ペイドメディアとして既に相当ターゲティングされた人達をファンに持つ雑誌というメディアを今一度再評価し、その使い方、組み方を模索しているように感じます。

編集力&雑誌ブランド力、キャスティング力、情報拡散力、イベント等コト消費への展開、これらを総合したコンテンツプロデュース力で消費者の共感を呼べるか、という視点でクライアントはビークルを選択します。また商品やブランドの世界観やテイストがペルソナにあっているか、上記コンテンツプロデュース能力以外、どの程度コンタクトポイントを保有していて、情報拡散力があるかを吟味していきます。

実施の際には、一度にいくつかの手法を組み合わせる事によって、消費者とのコンタクトポイントが増えるように工夫していくのですが、その際必ずしも本誌への掲載を希望しないケースも最近では増えてきています。
例えば、女性誌のインフルエンサー施策と読者組織のイベント展開のみにのりたいとか、雑誌に連載をもつ見識者のブッキングとオウンドメディア展開のみ希望とか、編集長や編集者をSNS執筆アサイン希望とか、実に様々なニーズがあります。これらは少し前までは、タイアップでの出稿が条件であったり、総額予算○○円以上で、という縛りがあるケースも多かったのですが、それでも以前に比べ各社ともかなり柔軟な対応ができるようになってきています。

出版社の知見と人材を活用

出版社には、長い間雑誌を作り上げてきた知見がたまっておりそのための人材も抱えています。その強みを見極め、活用していくことが大切なのは言うまでもありません。
「BtoB各専門分野の見識者リストを保有している」「趣味の分野に強い様々なエディターやクリエーターをかかえている」「幅広いスポーツ分野の人々にコンタクトできる」「ある特定の分野の大学生のフォロワーを多くかかえている編集者がいる」等々、最近弊社でクライアントの課題と媒体社の知見や人材がマッチして、企画として発生した例です。
汎用性よりもどちらかというと特定分野に特化しており、そこにニーズが発生した際、新たな仕事が生まれる事が多いように思われます。

「編集力」についてのあらためての考察

一方上記のような流れをとは別に、比較的、引き合いの多い雑誌というのが存在します。
これらは面白い事に、毎回ほぼ同じようなビークルで、例えるなら目黒川沿いに点在しているお洒落系SHOPに飾られているような、いわゆる「編集力、デザイン力が極めて高い」といわれているような雑誌ということになります。具体的にはCasa BRUTUS(マガジンハウス)、Pen(CCCメディアハウス)、TRANSIT(ユーフォリアファクトリー)、ENGINE(新潮社)といったあたりでしょうか。
若干ビジネスから離れてノスタルジックな話になってしまいますが、担当者視点で考えると、タイアップで組んだ場合、編集の方々がどういう切り口で誌面づくりをしてくれるか、一度は試してみたいというところだと思います。

紙に代わる新たなビジネスモデルが確立するまで、ブランドを維持できるか?というシビアな問題の中、何とも皮肉な話でありますが、商品のストーリー作りや見せ方、つまるところ雑誌の一番の肝ともいえる「編集力を研ぎ澄ましていくこと」は、やはり重要な事だと痛感します。
そしてこの「編集力の高さ」と、前述した「コンテンツプロデュース能力」、「コンタクトポイントの豊富さ」が両立していくところにこそ同メディアの未来があるのではないでしょうか。

PROFILE

メディアプロデュースグループ マネージャー

入社以来、営業局、メディア開発、ソニーとの新会社立ち上げを経験後、現在に至る。主にオフラインメディアの分野を中心に、デジタル視点とメディア全体を俯瞰した立ち位置で、様々なクライアントのメディア立案から実施まで行う。